きみの影踏み
『ヘブラスカに会っても吃驚すんなよー。』って、

無理でしょ、絶対。
どう見ても見た目は魔女かAKUMAなんだけどな・・・何て言うか、人と蛇を混ぜたような、物凄い巨大な・・・ひと?なんとなく女性的なイメージはあるけど、コムイさんによるとこの人もエクソシストらしい。って事はつまり一なのかな?と思って、この世界には変わったいきものがいるんだな。・・・って思ったけど、そう言えば魔女とかAKUMAがいるんだから、こういう変わった人がいてもおかしくないかと思い直した。いや、でも。と、そこまで思って「ふー」っと盛大に息を吐きだした。

結構前にラビくんと別れてから、私が人間かどうかの検査をしたついでに健康診断とか色々やった後に連れてこられたのがこの場所だった。

どういう原理で動いているのか、広く高いホールのような場所に連れてこられた後に逆ピラミッド型の乗り物に乗せられて。結構高い位置まで移動したそれの上で、更に高い位置で椅子に座る大元帥っていう顔の見えない5人の人に見降ろされて居心地の悪さを感じていた時だった。突然このヘブラスカとか言うのが下からぬっとあらわれたのは。それに戸惑いつつコムイさんにチラリと視線を移せば、彼はにこっと笑んで見せた。

ちゃんのイノセンス装備型なんだよね。じゃーヘブくんにそれ渡してあげてくれるかな。」
「は?」
「入団するエクソシストは身体検査とは別にイノセンスの審査もするんだ。」

その言葉に「はぁ」とシレッと普通の顔を作りながら、心臓の方はバクバクと鳴り響いている。・・・さて、どうなるかな。思いつつ、私はその思考を無理矢理振り払って指輪を胸元ほどまで持ち上げてそれを本来のソウルジェムの形に戻した。そうしてそれをヘブラスカって人を見上げながら右手で彼?彼女?の方へ持ち上げ翳して見せた。

「どうだいヘブラスカ。この神の使途は、キミのお気に召すかな?」









が検査や審査をするんでって食堂から出てった後も、俺はダラダラと食堂で時間を潰していた。・・・時。不意に後ろから掛けられた「あの餓鬼はどうした」ってゆー不機嫌な声に振り替える。そうすればそこにいたのはやっぱりユウ(蕎麦持ってっから今から夕飯なんだろう)で、それに取り敢えず「あん?の事ー?」と聞き返せば、当り前のこと聞くなって言わんばっかりな顔で睨みつけられた。怖っ

ならヘブラスカんトコ行ったぜ。」
「あぁ・・・あの審査か。」
「そーゆーユウは今まで何してたんさ?」
「昨日回収したイノセンスをヘブラスカんとこまで持って行ってたんだよ。」

その言葉にぱちり、瞬いて。あぁ、そういやその任務の帰りに連れて帰って来たんだったかと思いなおしてから一応ユウにお礼を言っておく。そうすればユウは俺に用があるのか、俺の隣・・・1席分開けた席に傍を置くとそこにドカッと座って手を合わせた。・・・つーか、そっか。もう日付跨いじまったんかと思いつつ、随分遅い夕飯さねなんて思いながらユウの方に顔を向けずに頬杖をついた。

「何?ユウに用あったん?」
「あるわけねーだろ。そもそも俺はあの餓鬼が嫌いだ。」
「・・・ユウが好きな奴なんていないんじゃないさ?」
「あァ?」

おっと、失言失言。思いつつ、でも俺も否定はしない。・・・そこまで露骨には言わねーけど。せめて「ま。確かに変わった子ではあるけどな。」くらいで言っとく。・・・実際アイツと2人でほんの少しだけ行動してみても、なんかすっげー変な感じしたんだよな。それに、あの棺を見た時の反応なんてもう      思いだして、しかめっ面を作った俺に「なんだ」と問うたユウは適当に誤魔化したけど、それでもあれは正直おっかなさすら感じたな。・・・ま、あれについては俺も人の事言えんけど。

「年齢と中身が合ってないんだろうなあ・・・俺等にはズレてるように感じるから、だから奇妙に見える。」

ちっさいガキが大人みたいな事言ってれば違和感があるし、デカイ大人がガキみたいな事を言ってても違和感がある。のはまさにそれで、頭が良いかどうかは分からんけど、あの年頃の子共にしては落ち着き過ぎてる。・・・って事以上に、なんか・・・妙に達観したっつーか、諦めたっつーか。そんな厭世的な価値観を持ってそうな雰囲気があった。確かに俺が思ってたより随分年齢は上だったみたいだけど、それにしたって・・・、

「あ。そーいや、13なんだってさ。」
「・・・・・・・・・は?何がだ。」
「いや、年が。」
「何かの間違いだろ。」
「いや、それがホントらしくて・・・吃驚だろ?」
「・・・・・・あぁ。いや、まぁ日本人なら妥当かもな。」

え、そうなん?と、でもユウがそう言うならきっとそうなんだろうなと納得して、日本人の童顔ってデフォなんだと妙な納得をした。いや、でも13でもあれは変さ。大人びて見えるってのも限度ってもんがあるしな・・・ちょっとアレは出来過ぎさ。どういう環境で育って来たんか知らんけど、あれはちょっと・・・

「13でも気持ち悪ぃな。」
「あ〜・・・でも確かにちょっとイイコ過ぎんな。」
「ハッ。おべんちゃらばっかりのお前がそこまで言うのも珍しいな。」
「ちょ、せめて人当たりがいいとか言ってくれよ。」

流石にその言いようがあんまりさ。言った俺の言葉は当然のように流された・・・っていうか、聞こえてすらいないような様子でズルズルと啜っている。・・・ちょ、隣(じゃねーけど)に座ったんならせめてちょっと暗い会話をしてくれ。思いつつ、小さく息を吐きだした。そうして思いだしのは以上に、あの小さい卵型のイノセンスだ。

「・・・しかし、ソウルジェム、ねぇ。」
「あの薄気味悪いイノセンスか。」

お、反応した。思いつつ、あの薄紫色に輝く見た目だけは綺麗だったイノセンスに対してこの言いようのユウに「薄気味悪いって・・・」と言いながら、だけど直ぐに「いや、まぁ確かにそうさね。」と納得してしまった。つーか、なんかおっかねぇよなぁ・・・。だってAKUMAの落とす化学班が調べても何にも分からなかった物質で強くなるって、なぁ。それを思っているのは同じなのか、ユウの方も微妙な顔をして日本茶を啜ると、その湯呑を置いてから再び口を開いた。

「ま、壊したAKUMAの落とす物質を糧にするってのは、ある意味まさにって感じもするけどな。」
「そう言う言い方すっと結構えげつないイノセンスだよな。」

いやいやほんと・・・おっかねぇなあ。しかし「・・・あのイノセンスに、あの適合者あり、かね。」呟いて。それに「あァ?」と視線だけをよこしたユウには「いんや、なーんでも」と笑っておいた。

いや、でもなあ。確かに薄気味悪いイノセンスだけど・・・流石にそんなのってありか?それにグリーフシードの情報だって、数多にあるブックマンの持つ情報の中にだって存在してない情報を、あんなちっさい・・・13歳の子供が何で知ってんのか。それもイノセンスが何らかの形で関与したのかどうなのかも分からんが、何にしてももやもやする。・・・取り敢えず、ジジイが戻ってきたら報告さね。俺が知らんだけでジジイは何か知ってっかもしれんし。いやぁ、でも。

「薄気味悪いガキ。」

ポツリ。呟いた音だけを聞いたのか、「は?何か言ったか?」と、ついさっき同じ事があったからか今度は怪訝に鋭い眼を向けて来たユウににこっと笑う。だから俺もまたさっきと全く同じように言う。「なーんにも」・・・取り敢えず、興味はあるから仲良くはするさ。
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