アルマジロ・ウォーク
あれからを曰く"私のお家"まで送り、そのままそこに泊まったわけじゃが・・・一時も目を放さずにあの忍に睨み据えられとった所為で寝た気がせんわ。そんなにワシは信用できんのか。・・・思いながら。もう直ぐ10時になろうかって時間になってようやく制服に着替えた(この着替えも堂々とワシらの前で着替えようとするもんだから、2人の持霊組がぎゃーぎゃー騒いどったが、)の横顔を見ながら、ベッドの上で胡坐をかいてその上に肘を乗せ頬杖をつきながら呟く。「しっかし、」

「私の家とか言ってらぶほてるなんぞに連れ込まれるから、誘われてるのかと思って肝が冷えたわい。」
「えぇー?私じゃ役不足かなあ?」
「不足しとらんからゾッとしたんじゃ、アホ。」
「ふふっ、そう?それじゃぁ・・「はいっダメー!教育的指導!!

びしっ!霊体だから触れる事が出来るわけがないのに、思いっ切りの頭上に振り下ろしてあたかも触れているかのような絶妙な場所でその手を止めた猿飛の見事なチョップもどきにひっそりと感嘆する。そんな猿飛に対しの方も「いたい!」なんて絶妙な位置で叫ぶもんだから、本当に猿飛が生身の身体であるように錯覚しそうじゃ。・・・だなどと思っとるワシの目の前で、が可愛らしく笑って見せた。

「なぁに?お父さんは娘の恋人とのお付き合いにまで口を出すの?そういうの、過保護って言うんだよ。」
「お父さん?!ちょ、俺様こんなに大きい子供いりません・・・っていうか、そんな爺さんと恋人って冗談でもきついよ・・・」
「なんじゃ。こんな色男そうそうおらんじゃろう。」
「色男って言うより色魔っぽいんだよアンタ。」
「しっ、色魔?!佐助ぇ!いくらなんでも失礼でござるぞ!!」

全くじゃ。ワシの代わりに弁解してくれた真田にもっと言ってやれと嗾ければ、猿飛に「アンタは黙ってて!」とキッと睨まれて真田と言い合いを開始した。・・・・・・・・・しかし。口の上手い猿飛に簡単に真田が言い包めらとるのを見て、これが彼の有名な名将、真田幸村とは・・・現実とは分からんもんじゃと1人思う。・・・と。真田が不意に時計に目を向けると、すぐさまハッとしたようにを仰ぎ見た。

殿!そろそろ学校の時間ですぞ!!」
「は?学校?お主何、」
「うん、そうだね。それじゃぁそろそろ行こうかな。」

え、いや・・・と、口を挟もうとして、じゃがにあんまりに無邪気ににーっこりと笑まれたもんだから止めた。・・・いま、10時だぞ。まさかコイツ、この2人に学校はこの時間からだ、とか言って教えたのか?とっくにはじまっとるじゃろうが。いや、でも今猿飛がワシの事怪訝に見て来たからバレたかもしれんの・・・すまん、

しかしその真田の言葉にぷくっと頬を膨れさせて見せるはどう見ても無邪気な子供なんじゃが・・・、思って。「。」と、その横顔に声を向ける。そうすればは頬から空気を抜いて元の状態に戻してから「なあに?」と首を傾げてワシに向き直った。じゃがその瞳の中に"真剣"がある事に気付いて、ワシの言わんとしている事が分かるのだろうと小さく肩を竦めて、問うた。

「・・・旧鼠は恐らく誰かに飼われていたにすぎんじゃろう。リクオが妖怪になった事を"よし"としとらん者がおる。」
「うん、そうだね。」
      お主はそ奴を知っておるのか?」

問うた言葉に、はしっとりと笑んで見せただけだった。そうして鞄を持って「それじゃぁ、またね。ぬらくん。」と、そう言ってワシに背を向けて歩き出したと、その後に続く2人の持霊を小さく息を吐く。・・・全くどうして、「難儀な娘じゃわい。」
校庭にある2メートルよりは高くある鉄棒の上に座って、そこに手をついて上を見上げていたけれど。「うーん・・・」と、声を漏らしてから身体を後ろに傾けた。そうしてそのまま重力に従って後ろに倒れた身体に幸村くんが「!!?」って驚いたように私の背中に回ったけど      回ったとろこで今は霊体の幸村くんに私を支える事は出来ないんだけど      、身体が落ちる前に膝を曲げてそれでぶら下がった。さら。髪が地面に落ちて、私の事をあんぐりと見下ろす幸村くんの逆さまの顔に笑む。笑んで、言う。

「なんだか面倒臭くなってきちゃったなあ。」

言った瞬間、ぎょっとされた。だけど2人して同時にグググッと眉を吊り上げるものだから、苦笑してしまう。・・・まぁ、2人の言い分も分かるのだけれど、と。そう思いながら、怒ってます!と言った顔を作った2人の言葉をひっくり返りながら耳で聞き、視界は白い雲の浮かぶさわやかな青空に向ける。

「ちょ、ダメだからね!寺子屋に通えるなんてそれだけで贅沢な事なんだよ?!それを日の本の今の世では皆がそこで学業を学べるって本当凄い事なんだから、ちょっとは真面目にお勉強しなさい!!大体まで来てからちょっとしか経って無いでしょ!!」
「そうで御座いますぞ、殿!今の世だからこそ許されたこの自由な環境を何故そのように蔑にされるのか!いつもいつも遅刻早退欠席ばかり・・・いくら殿でも許容致しかねまする!!」

2人とも熱心だなあ・・・思いながら。けれどまともに取り合ってあげるつもりも無いから「・・・はぁ。」と。わざと大きく溜息を吐く。そうして足を軸に身体を半円を描くように身体を揺らして鉄棒から足を放して、そのままト、と地面に足を付く。さらり。流れた髪を掻き上げて、やれやれと大仰な仕草で持って肩を竦める。

「あのね、佐助くん、幸村くん。遅刻も早退も欠席も、今の世だからこそ許される事なんだよ。そう言う意味では、私は今の世だからこそ許された自由を生きているんだよ。そう言う意味では、私は君達の言う今だから許される、を今まさに実行していると言う事になるんじゃないかな。」

キリッ!と表情を引き締めて、ゆったりと諭すように言えば、幸村くんは「む・・な、成る程。そうで御座ったか。」って納得したように頷いてくれたけど・・・佐助くんの方は更に目付きをギラリと悪くさせて幸村くんを睨み据えた。「ちょっと旦那!簡単に乗せられないでよ!」乗せたんじゃなくて、諭したつもりだったんだけど・・・「要するに今の開放的な世に胡坐掻いてサボろうって言うだけなんだからね!!」そう言ういい方も出来るかな。

思いながら。「嘘だったのでござるか?!」なんて、衝撃!って顔を作ってズイッと顔を寄せて来た幸村くんに「ごめんね」と笑う。そうすればぷりぷり怒る幸村くんを呆れたように、困ったように見る佐助くんを見て、呟く。

「佐助くんはお母さんだねえ・・・」
「ちょ、やめて。本当やめて。せめてお兄さんとかその辺にしてくれない?」
「では某が次男でござるな。」

佐助くんの言葉に胸を張ってそう言った幸村くんに「ちょっとぉ?!」って本当に嫌そうに困ったみたいに言うから、笑っちゃうったけど。・・・それが佐助くんの眼に留まって「お嬢は授業!」って言われちゃったから・・・うーん、失敗しちゃったなあ。でも、まぁ、「仕方ないなあ、」

「今日だけだよ?」
「違う!それ違う!!寧ろそれは俺様達が言うべき台詞であって授業に出るのは当たり前!!」
殿ぉ・・・」
「ふふっ、そんなに情けない顔をしないでよ。」

でも、そうしていると犬みたいだね。っていう言葉を言うと、本当に犬みたいに泣き出しちゃいそうだったから、やめておいた。
<< Back Date::120527 Next >>