該当者なし
シャワールームの扉のノブに手をかけながら「じゃぁ私探検行っちゃいますからね!後で後悔したって知りませんよ!!」ってリヴァイさんを指差し言えば、「うるせェとっとと行け」って犬とか猫を追い払うみたいにシッシって右手を振られた。それにわざとらしくすねてますって風に右頬を膨らませてから、「もう、行ってきます!」って扉を開けて・・・、

「ん?」「は?」

声が被った。ぱたり、外に出て扉を閉めてから、ぱちぱち。瞬きをすれば、目の前で汗だくで上着を脇に抱えたキルアくんもまた吃驚したみたいに大きい目を瞬かせて私の事を見てた。そうして1度私の開けたドアの横にある『SHOWER ROOM』って表札を見て、また私に視線を戻して・・・何だかとっても複雑な・・・怪訝と驚愕を足して二で割ったような顔を作って、扉の方を指差した。

「・・・お前・・・そこ、風呂だよな?」
「?うん、お風呂だね。キルアくんはいりたいの?」
「いや、まぁ、入りてーけど・・・いや、じゃなくて。中・・・リヴァイの声しなかった?」
「?うん、したね。」
はぁ?!!

行き成りおっきい声を出されて「わっびっくりした」って一歩後ろに引けば、私が引いた分キルアくんが前にずいって詰めてきたからあんまり意味無かった。「吃驚したはこっちの台詞だ!」

「お前等一緒に風呂入ってたのかよ!?」
「え、入らないよ。順番に決まってるでしょ?」
「・・・・・・・・は?じゃぁ何で別の部屋使わねェんだよ。」
「一身上の都合だよ。」
「は?」
「なんて言ったって私の命がかかってるからね!」

言った言葉に「わけわかんねー」って、すっごい不満げな顔を返されちゃったけど・・・本当なんだけどなあっていう言葉は返さないでおいた。ジロリ。睨まれて、うーんってどうしようかなって2秒くらい悩んで、でも直ぐに「あ」って思い付いたから、未だに私の事を睨んでるキルアくんに向けて首を傾げた。

「ねぇキルアくん、ゴンくんは?」
「はぁ?俺がいつもゴンと一緒に行動してると思ったら大間違いだぜ?」
「え、でもさっきまで一緒だったでしょ?ネテロさんと一緒に。」
「・・・・・・・・・ストーカーかよ。」
「あはは、違うよ。」

失礼だなあ、もう。そう言って笑ってから、ふと、気付く。気付けば、ぎゅ。キルアくんが服を抱えてる手とは逆の手を握って、それにほんの少しだけびくって震えたキルアくんに、笑む。にこり。

「それよりキルアくん、他のお風呂ぜんぶ使われてたんでしょ?此処使いなよ。リヴァイさんきっと喜ぶよ。」
「はぁ?なんでリヴァイが喜ぶー・・・っつーか何で他の風呂開いてなかったの知ってんだよ。」
「手とか握ってあげると良いよ。きっと今頃1人で心細いって震えてるから。」
「聞けよ人の話し!!ってか、アイツがそんな怯えるような奴かよ!」
「怯えるよー。きっと今頃私を引き止めなかった事後悔してるよー。」
「わけわかんねー。」

私の言葉にキルアくんは本当に訳が分からないって風に言ったけど、私の方は気にせずにガチャって1度閉めたドアをもう1度明けて、中でズボンに手をかけて片足だけ脱いだ状態ですっごく嫌そうな顔をして振り返ったリヴァイさんの方に、ずい。キルアくんの手を引いてからシャワールームの中に入れて、その後でキルアくんの後ろに回ってぽんっとキルアくんの両肩に手を乗せた。

「リヴァイさーん、吉報ですよ!キルアくんが一緒にお風呂入ってくれるって!」
「言ってねーよ!!」
「マジか。おい、早く来いキルア。」
「いや何でそんなノリ気なんだよ?!入んねーって!」
「何言ってる。今なら背中も流してやるからとっとと来い。」

さっとズボンから足を抜いてパンツ一丁で歩いて来たリヴァイさんにふすっと笑う。笑ってる内にガシッ!ってキルアくんの腕を掴んだリヴァイさんが足早にシャワーブースに歩く横で、腕を引っ張られながら私に(どうすんだこれ?!)って言わんばっかりの顔で私を振り返ったキルアくんに、ひらひら。右手を振った。

「いってらっしゃーい。ちゃんとあったまってから出るんだよー。」
「ちょっ」

ぱたん。とっても何か言いたげだったキルアくんに気付かない振りをして、とっととシャワールームの外に出た。出て。・・・いいなあ、キルアくん。弟って、あんなかんじなんだろうなあ。イルミくん羨ましいなあ。なんて、そんな事を頭の片隅で思いながら、最初はやっぱり操縦室とかそういう所からみたいなあって、ちょっとうきうきしながら飛行船の中を歩く。そうして歩いててたら、ちょっと奥まった所に見覚えのある人影を見付けて、自分でもぱっと表情が明るくなったのが分かった。だからその表情のまま、ぶんぶん右手を左右に振って2人の元に駆け寄った。「クラピカくーん、レオリオくーん!」

「2人ともどうしたの?こんな所に座り込んで、お腹でも痛いの?」
「なんでそうなんだよ、普通に休んでんだよ。」
「?休んでるの?」

ちょっと奥まった場所で壁に背を靠れさせて座ってる2人に合わせてすっと座り込んで聞けば、レオリオくんになんだかものすっごく訳が分からないって目で見られちゃって瞬いた。その上「いや休むだろ、何首傾げてんだよ」って顔を歪められちゃった。その事にまたぱちぱちと瞬いていれば、ふとそのレオリオ君の横からクラピカくんの視線を感じて視線を移せば・・・なんていうか、とっても何か物言いたげな顔をしてるクラピカくんと目が合った。だけどクラピカくんの方はといえば、折角視線が合ったのに、その視線をそらしては彷徨わせて、かと思えばまた私を見たりって風だから、私の方から首をかしげて「なあに?」って聞いてみた。そうしたらクラピカくんはとっても言い辛そうに眉を寄せて、だけど重たそうに口を開いた。

「・・・女性が、入浴後に直ぐに出歩くのはいかがなものだろうか。」
「あはは、湯冷めしちゃうかなー?でも私代謝良いから大丈夫だよ。」
「いや、そうではなく・・・」
「それよりクラピカくんとレオリオくん、まさか本当にもう寝ちゃうの?」
「・・・・・・・・・」
「おいクラピカ、多分コイツ何言っても無駄だと思うぞ。」

2人に聞いた私に対して、レオリオくんにとっても失礼な物言いで指さされた。それに「もう、なあに?失礼だよ!」って遺憾の意を示したんだけど、なんでかクラピカくんの方まで口を噤んじゃったから、私は一人腑に落ちなさを感じながらもむくれることしか出来なかった。
・・・と。そんな私に呆れたみたいな顔を向けてたレオリオくんが突然ん?って思い出したように私を見た。「つーか、」

「もうってお前!そりゃ寝るだろうよ、どんだけ疲れたと思っとんじゃ!?」
「えぇ〜?んー、そっかぁ、寝ちゃうのかあ。」

残念、って思ってたのが声にも出でた。そうしたらクラピカくんが不思議そうに「?私達に何か用があったのか?」って聞いてくれたから、「んー・・・」って首を傾げた。傾げて、「んーっとね、大した事じゃないんだけど・・・」

「リヴァイさんに振られちゃったから一緒に飛行船のなか探検してくれる人探してたの。」
「「・・・・・・・・・」」
「あ!何その顔!!子供だなあ、みたいな顔して!!失礼しちゃうなあ!!」

私が言った途端になんか微妙な顔をした2人を指差して文句を言えば、「言っている事がゴンとキルアと同じなのだよ」って失笑みたいに零された、それがなんだかとってもバカにされているような・・・っていうよりは、なんだか小さい子供の突拍子のない思い付きを生暖かい目で見る大人みたいな顔で、それがますますもって納得いかない。「だって!」

「こういう機会じゃないと飛行船の中なんて探検出来ないでしょ!飛行船なんて滅多に乗らないし、乗ってもあんまり他のお客さんのいる前でうろうろするのも悪いし、ちょっと恥ずかしいし!今なら面白い人達ばっかりだから心おきなく探検できるでしょ!」

ぷりぷり。怒ってますよ!っていう風にそう訴えれば、「あーわかったわかった」って、今度はあしらうみたいに言われちゃったから、多分これ以上は何言っても駄目だろうなってこれ以上論議するのはやめよう。って、思ったところで。ほんの少しだけ申し訳ない、みたいな顔をしたクラピカくんが控えめに口を開いた。

「・・・ゴンとキルアが随分前に飛行船を探検すると何処かに行ったぞ。」
「えぇ?2人は駄目だよ、今忙しそうだから。」
「は?」
「ゴンくん、ネテロさんと一緒にいるの。だから邪魔出来ないんだ。」
「ん?」
「それにキルアくんは今リヴァイさんとお風呂だし。」
「いやいや待て待てどうしてそうなった?!」

レオリオくん、実はあんまり疲れてないんじゃないかな?っていうくらい元気よく叫んだレオリオくんに「怖がりなリヴァイさんとお風呂に入りたかったキルアくんの利害が一致したんだよ」って説明すれば、だけどこんなに分かりやすい説明もないだろうって思ってたのに「わけわからん」って返されちゃった。おかしいなあ、言った言葉の通りなんだけど・・・はぁ。溜息を一つ落として肩をすくめる。「・・・うん。でもしょうがないね、」

「明日もあるし、ゆっくり眠って体力回復しないとダメな事もあるよね。」
「おーそーだそーだ。お前もとっとと寝ねェと明日体力持たねーぞ。」
「そうだね、元気な人探して探検するね。」
「だから寝ろっつーに!!」

すくっと立ち上がって両拳を握って言ったらまた怒鳴られちゃった。レオリオくん、ストレスでも溜まってるのかな?はやく眠ったほうがいいよ。そういってから「ばいばい、おやすみ」って手を振ってまた飛行船の中をふらふら歩く事にする。・・・でもそっかー。もう夜だし、一緒に探検してくれる人ってあんまりいないかもなあ。寂しいけど1人で探検するしかないかなあ。






スキップでもしそうな明るさでもって飛行船の奥に歩いて行ったの後姿を見送りながら、なんつーかー・・・珍妙な疲れを覚えてはぁああ〜っと盛大に溜息を吐き出した。そうして隣のクラピカにってわけでもないが、自然と漏れた溜息じみた言葉を漏らす。

「・・・なんでゴンにしろキルアにしろにしろ、子供ははあんな元気なんだ。」
「・・・疲労より好奇心の方が勝っているからだろうな。」

成程っつってまぁ納得はしたが、もはや呆れしかねーわ。これで明日疲れたとか言って落ちたら笑うに笑えねえが、アイツの保護者は何してんだ。ガキが夜更かししてたら止めろよなー・・・・・・・・・あ。キルアと風呂か。つーかマジで何でキルアと風呂なんだ?アイツゴンと一緒に行動してたんじゃねぇのかよ?ったく、ほんっとにあの2人組はわけがわからん!!
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