恒久の平和
ひとしきりリヴァイさんと感動を噛み締めた後、ハッと思いだして「そう言えば、調味料ありがとうございました。」ってぺこり、頭を下げた。そうすればメンチさんは数秒不思議そうにした後、だけど直ぐに「あぁ、いーのいーの。」って右手を振って笑った。

「アタシもまさか内臓1つ1つまでしっかり調理してくれるなんて思ってもいなかったし。アンタ等ほんっとーに訳分かんないけど、その心意気は気に入ったわ!その上しっかり美味かったしね。特にモツ煮は最高だったわ。良い美食ハンターになりなさいよ!」

そのメンチさんに言ってもらえた言葉に、ちょっと感動した。先にブハラさんに豚の丸焼きを提出した後で、余った内臓で造った簡単な料理も一緒に出したら、そっちの方をメンチさんも少し摘まんでくれたのだ。リヴァイさんにも美味しいって言ってもらえたけど、やっぱり料理人の人にそう言って貰えるとまた違った感動がある。それに感動しながら、だけど最後のメンチさんのびしょくはんたー?って言う言葉にん?って瞬いた。瞬いて、それを何か聞く前に、ブハラさんがポンってお腹を叩いた。

「あ〜食った食った。もーおなかいっぱい!」

その言葉を合図に、メンチさんがゴォォオン!ってドラを鳴らして「終ー了ォー!!」って合図。取り敢えずあんまりメンチさんの近くにいて邪魔をしたら悪いから、すすすっとリヴァイさんと一緒にそこから離れる。離れて、「豚の丸焼き料理審査!!70名が通過!!」って続けたメンチさんの言葉にギョッとした。ぶ、豚の丸焼き70頭・・・?あの、おっきい、豚の・・・??あんな、未処理の、焼いただけの、豚の丸焼きを・・・?

「・・・ありゃぁ・・・・・・念能力か?」
「俺の胃袋は宇宙だ、ってやつですね。」
「は?なんだそりゃ。」
「いえ、念能力以外あり得ないと思います。っていうか、あり得てほしくないです。」

なんか・・・物凄く胃袋を強化してるとか、胃袋を何か四次元ポケット的な何かに変化させてるとか。そうあってほしい。あれで私達とおんなじ人間だなんて信じたくない。・・・・・・・・・す・・・怖いもの見たさと、確かめたい好奇心でスマフォをブハラさんに向けようとしたら、ガッ!って手首を掴まれた。それに私の手首を掴んだリヴァイさんを振り返れば・・・凄く深刻な顔で無言で首を振られた。
・・・・・・・・・はい、やめます。実際にスマフォでデータを見てみて、あれで念能力も何も使っていないで普通に、普通に食べてただけなんて出てきたら・・・・・・うん。知らない方が幸せな事も、あるよね。

無言でスマフォをしまった。そんな事をしてる間にメンチさんの話は進んで、メンチさんが元気よく言葉を続ける。「アタシはブハラと違って辛党よ!!審査も厳しくいくわよー。」

「二次試験後半、アタシのメニューはスシよ!!」

・・・・・・スシ?お寿司?きょとん。首を傾げて、リヴァイさんを見る。そうしたらリヴァイさんもまた怪訝な顔をして私を見返したけど・・・「ヒントをあげるわ!!中を見てごらんなさーい!!此処で料理を作るのよ!!」その言葉の通りにあの小屋の中を見れば(私達は豚の丸焼きを作る時に調味料借りたから見たけど)、魚を捌く包丁に、お米に酢飯に流し台が準備されてる。

「最低限必要な道具と材料はそろえてあるし、スシに不可欠なご飯はこちらで用意してあげたわ。そして最大のヒント!!スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!!」・・・ん?ヒント?「それじゃスタートよ!!アタシが満腹になった時点で試験は終了!!その間に何個作って来てもいいわよ!!」

ヒント・・・何個作って来ても・・・?メンチさんの言った言葉に瞬いて、首を傾げて、だけど結局「・・・お寿司?」って声を上げた私に対して、リヴァイさんはやっぱり相変わらずの怪訝顔で私に言う。「・・・よ。」

「寿司ってのは海水魚をネタにすんのが一般的なんじゃなかったのか?」
「・・・はい。にぎり寿司って大体生魚を使うじゃないですか。でも川魚って寄生虫が寄生してる事があるんです。だからそう言ったお寿司に"当たる"危険を避ける為に生での仕様は避けるっていうのが一般的なんです。勿論淡水魚を使うお寿司もあるんですけど、その時はきちんと火を通したり、後はなれ鮨みたいにお米の発酵で寄生虫を殺して作ったりしてるみたいです。」

私がそれを言えば、「ほぅ」って感心したみたいに声を上げたリヴァイさんに、私は「だから、」って言葉を続ける。・・・やっぱり、変。豚の丸焼きの件でメンチさんは普通の人・・・っていうか、私達はきっと普通だって思ったのに、やっぱり、違うのかもしれない。「・・・だから、」

「あんな不気味な湿原の近くに生息してる魚とか、私なら絶対食べたくないです。
「・・・・・・美食家の探究心ってのはすげぇな。」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・魚じゃなくて卵にしますか?ほら、鳥なら沢山いましたし。」

感嘆というよりは唖然って様子で呟いたリヴァイさんの言葉に、重たい沈黙が包んだ。だけどこれ、試験だし・・・受かりたいし・・・って思ってそれを提案すれば、ぽつり。「そうだな。」って呟いたリヴァイさんの言葉に何とはなしに1度溜息を吐きだしてから、にこって笑む。

「それじゃーさっそく行きましょうか。卵って言っても食べれるのがあるか探さないといけないですし。」
「・・・そうだな。」

だ、大丈夫かなリヴァイさん・・・
「んー・・・?これもダメー。」
「おい、これはどうだ?」
「えっと・・・あー、それもダメですねー。」

見付けた鳥の巣にすっぽり収まってる卵にスマフォを向けて、それがちゃんと人が食べれるか、美味しいか美味しくないかを調べてるけど・・・やっぱり訳の分からない動物の卵だから、味が変なのとかもう直ぐ生まれますっていうのだったり、中々ちゃんと料理できそうな卵が見つからない。だから今回もまた持って来てくれた卵のデータを見てそう言った私に「そうか」って短く返すと、今持って来た卵を巣に戻しに行くリヴァイさん。

・・・グーグルアースは一応物探しも出来るんだけど、流石に『食べれる卵』とかぼやっとした感じじゃ無理なんだよなあ。そんな事を考えながら木々の上を立体機動で移動して、また見つけた鳥の巣の中の卵にスマフォを向けてー・・・・・・・・・あ。

「リヴァイさぁーん!ありましたよー!!」

静かな森の中だからと思って叫んだけど、・・・聞こえたかな?電話にした方がいいかな、そう思いなおしてケータイを開いたら、いいタイミングでリヴァイさんからの着信音が鳴った。で、出たら「しょうもない事で叫ぶな、みっともねぇ」って言われちゃった。「ごめんなさい」。

言いながら、両手を合わせて卵に手を伸ばす。無精卵ならまだ良心も痛まなかったんだけど、そう都合よく無精卵なんてあるものじゃないから、此処まで親鳥が守って来た有精卵をいくつか拝借。そうしてリヴァイさんと合流してから立体機動で二次試験会場に向かう。その最中、リヴァイさんがちょっと前に見せた怪訝顔で私に声を向けた。

「しかし・・・ヒントとか何とか言っていたが、寿司ってのはそんなに難しい物なのか?」
「え?いやー・・・まぁ、職人になるのは大変ですけど・・・魚さえ捌ければ別にそんなに難しいものじゃないですよ。」

確かに握り寿司は家庭じゃあんまりやらなくて、手巻き寿司とかちらし寿司が一般的だけど・・・別にそれは簡単だからであって、握りずしが極端に難しいって言うわけじゃない。だから私も少し疑問に思ってたんだけど・・・だけどふと思い至った事があるからそれを口にしてみる。「んーと、」

「多分・・・作り方って言うより、そもそもお寿司そのものが知られてないだけかもしれないです。」
「そうなのか?」
「多分・・・そう言えばお寿司屋さんとか見た事無いなあって。」
「そんなもんがあるのか?」

私の言葉に不思議そうに言ったリヴァイさんもまた、私と出会うまではお寿司を知らなかったらしい。私が夜ごはんに手巻きずしをと思って、自分で巻いて食べるようにお米と中に入れる具と海苔をバラバラにテーブルに並べたんだけど・・・食べ方が分からないって不思議そうな顔て、結局バラバラにお箸でつまんで食べようとしてたのは懐かしい思い出だ。

「ありますよー。回るお寿司と回らないお寿司があって、回るお寿司の方が割とリーズナブルでよく行ったんですよ。」

言って、思い出す。家の・・・近くって程近くはないけど、でも同じ町にあった回転寿司のお店。時々お父さんが運転する車で家族揃って食べに行って、流れてくるお寿司をそのまま手に取ったり。タッチパネルで注文したお寿司を食べたり。色の違うお皿を積み上げて、皆で笑って、次は何食べようって考えてー・・・・・・・・・やめよう。
自分で言った言葉に傷付くなんて、馬鹿だ。だから昔を思い出す事は止めて、こっちの世界の事を考える。「でもこっちではそもそも生魚を食べる事自体が一般的じゃないみたいですしねー」そう言って続けた私に、だけどリヴァイさんは何故か酷い困惑顔だ。

「・・・回る?・・・・・・・・・寿司が?回るのか?」
「え?えーっと、回るのはお皿の方でー、えーっと・・・」
「皿が、回る・・・?」

・・・あ、これは本気で混乱してる顔だな。「じゃぁ後で絵に描いて説明しますね」にこって笑んでそれを言えば、「あぁ」って短い返事だけだったけど・・・その声の中に確かな興味を見付けて笑った。今、リヴァイさんの頭の中の回転寿司がどうなってるのか凄く気になる。・・・・・・・・・「ふはっ」勝手に想像して吹き出した。ら。察したらしいリヴァイさんに立体機動で動いてるのに器用に後ろから絶妙な力加減で、ベシッ!頭を叩かれた。「いたい!」
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