泥棒さがし
走るペースを速めたらいつの間にか先頭を走る・・・ん?歩く?ええと、凄い早歩きをしてるサトツさんから、2人の子供    イルミくんの弟くんともう一人の子    を挟んだ前から2番目まで来ちゃったけど・・・前を行くその3人の顔、特にサトツさんとキルアくんの顔が物凄く涼しいものだったから、この世界の人ってやっぱり可笑しいなって思う。・・・因みにその2人を抜かさないのは別に順位を争うような試験じゃない事と、「ガキは先頭とか好きだろ」ってリヴァイさんが微妙な優しさを発揮したからだ。
そんな事を考えながら走る事暫く。グーグルアースで知った通りに階段になったこの道を進みながら、隣のリヴァイさんを見る。

「リヴァイさぁん、階段ですよー。」
「そりゃぁよかった、お前の目は正常だ。」
「今こそ立体機動装置の出番じゃないでしょうか!!」
「馬鹿言え、平地での立体機動は戦闘には不向きだ。」
「兵長!今は戦闘行為は行っていません!!」
「なら足で進め。」

涼しい顔で言われて「鬼!」って返せば、「煩ェ、黙って進め。」って怒られた。その上「無駄な体力を消耗するな。」って最もな事言われた。それにそれもそうだなって思いながら・・・だけど此処から先またどんな試験変わらかない内に無駄に体力を消耗したくない上に、そもそもちょっと面倒臭いなって思ってるから、・・・・・・

「ぐ・・・で、でしたら兵長!平地ではなく森とか林とかそう言う場所に出たら立体機動の使用を許可して下さいますか!」
「分かった分かった、そんな所に着いたらな。分かったから黙って進め。」

食い下がったら折れてくれた。それに「はーい」って聞きわけよく返事を返した所で、でも100kmならそろそろこの階段も終わりの筈だよなあって上を見る。と、眼を凝らしたら上の方から人工的じゃない光りが漏れている事に気付いた。それに「リヴァイさん」って上の方を指さして見せれば、リヴァイさんもまたやっとかって感じに眉を寄せた。

「・・・ようやく出口だな。」
「えぇ?あそこが本当に出口かは分からないですよー?」
「・・・・・・・・・そうだな。」
「えっ、どういう事?あそこって出口じゃないの?」

私の言葉に物凄ーく嫌そうに眉を寄せて言ったリヴァイさんのその後に、突然私達のものじゃない声が降ってきた。それに視線を出口・・・って思われるそこからもう少し手前に移せば、前を走ってた男の子が振り返って大きい目を瞬かせてた。因みにこの子の後ろを走ってる間にウィキペディアでこの子が『ゴン・フリークス』って名前だって事は知ってる。そんなゴンくんの横でキルアくんが訝しげな目を向けて来たけど、それも含めてにこって笑う。

「あそこはこのトンネルの出口じゃなくって、もーっと過酷な場所への入り口かもしれないねって事。」
「えっ嘘!」
「俺はそっちの方がいいね。こんな程度じゃつまんねーし。」

いや、私も適当に言ってるだけなんだけどね。私の言葉に吃驚したように声を上げたゴンくんと、ちょっと生意気な事を言うキルアくん。そんな2人に向けてリヴァイさんが「おいガキ共、後ろ向いて走るな転ぶぞ」って眉を寄せる。それにゴンくんは「あ、うん」って直ぐに前を向いたのに、キルアくんの方は「そんなヘマしねーよ」ってまた生意気な事言ったものから、ゴン!って、それはもう痛そうな音を立ててリヴァイさんに拳骨落とされた。「いってぇ!!」本当に痛そう。

思った私の前で、ゴンくんが頭を抱えて数段後ろに下がったキルアくんを振り返って「うわっ、キルア大丈ー・・うわっ!」って足を滑らせた。のを、リヴァイさんがゴンくんの服の襟首を引っ掴んだ。

「だから前を向けと言っただろう。」
「わ、ありがとう!」

呆れたように、でもゴンくんは最初にちゃんと前を向いたから拳骨は落とされなかった。・・・と。そんな事をしてる内に、いよいよ出口(と、思われる)その場所に出た。出て、瞬き。なんか、見渡す限り広大な湿原が広がってる。薄暗い・・・なんて言うか、嫌な感じの湿原。・・・・・・・・・、

「おねーさん良い勘してるね。」
「あはは、あんまり当たってほしくなかったなー。」

未だに頭をさすってるキルアくんが横で笑った。それに私もまた笑って返して、走ってた時に乱れた髪をささっと直す。そんな私に対して「そう言う割には余裕そうな顔してるけど?」ってニヤッて口端を吊り上げたキルアくんは、なんかちょっと猫に似てるなあって思いながら「キルアくんほどじゃないよ」って返しておいた。ら、凄い怪訝な顔を向けられちゃった。

「・・・・・・・・・俺、お姉さんに名乗ったっけ?」
「キルアくんは私に名乗った覚えがあるの?」
「うっわ、嫌な切り返し。」

にこっ、笑えば凄く嫌そうな顔されちゃった。だけど念能力は念を知らない人には教えちゃだめってリヴァイさんに言われてるから、ウィキペディアについては言えないんだよなあ。だからちょっとキルアくんが嫌そうな言い方して返したけど、正解だったみたい。キルアくんはリヴァイさんと違って扱いやすいなあ。そう思ってまたあははって笑った私に、ゴンくんが不思議そうな顔をして私を見た。

「ねぇねぇ、お姉さんの名前はなんて言うの?」
だよー。よろしくね、ゴンくん。」
「え!俺の名前も知ってるの!!?」
「おいゴン、こいつ等俺等の後ろ走ってたんだぜ?その時聞いてたんだろ?」

良い感じにそう勘違いしてくれたキルアくんが言えば、「あ、そっか。」って納得するゴンくん。そんな私ににこにこ笑ってる私に、リヴァイさんが横から無言で肘鉄を脇腹に入れて来た。ぜ、絶対シレッと2人の名前言ったこと怒ってるんだ。で、でもこのくらい大丈夫だよ・・・って言おうとして、口答えするなって目で睨まれたから黙った。ご、ごめんなさい・・・この地味な痛みに脇を押さえてる私を尻目に、キルアくんがリヴァイさんを見る。

「で?そっちのオッサンは?」
「リヴァイだ。」
「そっかあ、リヴァイさん童顔なのにキルアくんの年齢で見るとおじさんなんだー。」
「おい、童顔は余計だ。三十路過ぎたオッサンなんて誰から見てもオッサンだ。」

おじさんって言う事より童顔気にしてるんだよな、リヴァイさん。身長の事とかはそんなに気にしてないのになあ、不思議。若く見られるならそっちの方がいいんじゃないのかな?・・・あ、年相応に見られたいって事なのかな。分かんないけど。そんな事を考えてる私の傍ら。不意にキルアくんが「・・・・・・・・・リヴァイ?」って眉を寄せた。それに何かなって思ってれば、ジってリヴァイさんの顔を見つめたまま続ける。

「なんか・・・・・・・・・俺、アンタに会った事あるような気がすんだけど、」
「あれ?キルアくんもなの?リヴァイさんもキルアくんの事見た事あるかもって言ってたよ。」
「思いだしたらいつ会ったか教えろよ。」
「は?」
「リヴァイさんはもう思いだす事諦めたんだって。」

なんだそれ。そう言わんばっかりに顔をしかめたキルアくんは、だけどさっきの拳骨が利いてるのか何も言わなかった。・・・と。そんな事を話してる間に、後列を走ってた人達も結構地下通路からこの湿原に出てきた。そうして人が増えると、またざわざわ声が聞こえてくるわけだけど、その中でもやっぱり此処が何処なのかって声が多い。私もちょっと気になったからスマフォを出してこの湿原の写真を撮ると、グーグルアースを起動させた。えーと・・・?

「ヌメーレ湿原、通称"詐欺師の塒"。二次試験会場へは此処を通って行かねばなりません。この湿原にしかいない珍妙な動物達、その多くが人間もを欺いて食料にしようとする、狡猾で貪欲な生き物です。十分注意して着いて来て下さい。騙されると死にますよ。」

サトツさんの言った通りの事が表示された。その画面をスクロースさせてると、ウィーンって音が聞こえてきた。それに後ろを振り返れば、地下通路への道をシャッターで閉ざしてた。それに1度瞬いてから、視線を画面に戻して今度はこの湿原にどんな生き物がいるのかを調べる。

「この湿原の生き物はありとあらゆる方法で獲物を欺き捕食しようとします。標的を騙して食い物にする生物たちの生態系・・・詐欺師の塒と呼ばれる所以です。」

大きい亀みたいな生き物に、嘘吐き鴉に爆発するキノコ。うわぁ、催眠、擬態、偽証。本当に何でもする生き物ばっかりだなあ。・・・これは確かにいつまでもあのシャッター開けっ放しにしてたら不味いか。この通路、一応ザバン市に繋がってるんだもんね。あのエレベーターがあるとはいえ、流石に危ない。

「騙される事の無いよう注意深く、しっかりと私の後を着いて来て下さい。」
「おかしな事言うぜ、騙されるのが分かってて騙されるわけねーだろ」

サトツさんのその注意を喚起した言葉に誰かがそんな事を言ったけど、どうかなあ・・・飢えてる生き物って怖いからなあ、案外騙される人、多いんじゃないかなあ。でもハンター試験ってこんな危ない所歩かせたりするんだ・・・これは・・・確かに死んじゃう人、いそうだなあ。・・・・・・なんか、本当にハンター試験って大丈夫な試験なのかどうか不安になって来た。そう思ってはぁって溜息を吐いた所で、突然後方から大きい声が聞こえてきた。

「嘘だ!!そいつは嘘をついている!!」

・・・・・・・・・ほらぁ、こういうのだよ。
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