ていたらくの作り笑い
「ぶっ!あーっはっはははははははは!!!何それそんな面白い友達いんの?!!」

ヨークシンで借りてる俺のアパートを珍しく訪れたフェイタンに、まさかまた主に強化系馬鹿達を引き連れて酒盛りでもするつもりじゃないだろうな・・・って訝んでいた俺に、だけどそんな事はなかった。寧ろとんでもない笑い話を持って来たフェイタンに、さっきから俺の腹筋が悲鳴あげてる。そうして腹抱えて笑ってる俺の前で、フェイタンが心底呆れ果てたって顔して溜息を吐いた。

「馬鹿だ馬鹿だ思てたけど、あそこまでとは予想外だたよ。」
「ひーひー!あはははははは!や、やべっ、い、息出来な・・ッ、ぶはっ!」

まずフェイタンに友達がいたって事自体が笑い話だったのに、その友達がまたとんでもない。ただの一般人ってだけならまだ吃驚、で済んだのに、その友達がまたとんでもない。フェイタンの相手を出来るくらいだからよっぽど心の広い神様みたいな奴だと思ったら、只の馬鹿だった。それもとんでもないレベルの。・・・・・・あ、やべっまた笑えて来た。

「それも話聞く限り、そいつにハンター試験誘た奴も馬鹿みたいよ。ライセンス戸籍みたいなもの言うたらしいね。」
「ッ〜〜、ぶっふぅ!!あっはひっ、はははははっ」
「ライセンス取て一般企業に就職するらしいよ。馬鹿の友人はやぱり馬鹿ね。」
「ッ!!〜〜!!!!!」
「好い加減笑い止めないと窒息死するよ。」

ラ、ライセンス取って、一般企業に就職・・・!!!や、ヤバい笑い声どころか息もできなくなってきた・・・!!そ、そんな馬鹿が、2人!!どうなってんの?類は友を呼ぶって奴?!!いやぁ、馬鹿って怖いなあ。俺頭良くてよかったー。

そんな事を考えながらも身体の方の爆笑の嵐は止まらなくて、それが収まったのは暫く経ってからだった。はーっと。ようやっと落ち着いた所で目尻に溜まるどころかもう頬を伝って流れ落ちる程笑い泣いた涙を拭って、だけど痛むお腹を押さえる。・・・心なしか心の中のお友達にじゃなくて、目の前の俺に呆れたって眼を向けてるように見えるフェイタンに向き直った。

「で、何?1月のハンター試験の会場?それ調べればいいわけ?」
「あの馬鹿にせめてもの餞別よ。」
「めっずらしー!そんなに仲良いの?」
「アイツの作る料理気に入てるだけよ。」
「へぇ?まんまと飯ウマなお嫁さんに胃袋掴まれちゃったわけだ。」
「あんな脳足りんが嫁なんて首落としたくなるような冗談ね。減らず口叩いてる暇あたらととと調べるいいよ。」

その落としたくなる首が誰のものか、は、聞かないでおく。自分の首をすり、と擦ってからパソコンを立ち上げる。別に今回はハンター試験の会場を調べる為にちょこっとハッキングするだけだから仮家の回線でも大丈夫でしょ。協会側も受験者が試験会場を探し当てる手段については結構寛容だからね、これを咎められる事はない。それにもしも万が一、億が一にも咎められそうになったとしても、このアパートは別の人間の名義で借りてるからとっとと解約してしまえばいい。
カタカタカタ。キーボードを暫く叩いていれば、「お」と。目当てのファイルを見付けてそれを躊躇なく開いた。・・・と、

「・・・あ、出たよー。ザバン市の定食屋だ。ザバン市ツバシ町2-5-10にある飯処『ごはん』って所だね。」

そういってパソコンの画面をフェイタンに向ければ、フェイタンはそこに表示された文字をそのままケータイに打ちこんで行った。うーん、でもフェイタンが気まぐれでもこんな親切を向けるお友達が・・・一体どのくらい料理美味いんだろ。っていうか、何処の店だろ。やっぱり中華かな?・・・ん?わざわざフェイタンが俺ん家に寄って来たって事は、もしかしたら案外近い所にその店あるのかもしれないな。・・・・・・・・・今度調べてやろ。
そんな事を考えながら、だけど顔の表面ではしっかり親切な顔を作っておく。「合言葉は、"ステーキ定食、弱火でじっくり"。」

それにしてもフェイタンの友達かあ・・・一体どんな変人なんだろ。楽しみだなあ。
Date::130908 Window Close ...?